佐藤未希「沈黙の声」
2021年6月2日(水)-20日(日) →7月4日(日)まで延長
12:00-19:00 (日 -17:00)
月・火 休
Yoshimi Arts
*コロナ感染状況により、会期・営業時間が変更になる場合がございます
この度、Yoshimi Artsでは7回目となる佐藤未希の個展「沈黙の声」を開催致します。
佐藤未希の作品の制作過程は、様々なメディアを流通する既存のイメージを用いて、ドローイングの工程を幾重と重ね考察を行い、油彩によるタブロー制作へと至ります。ドローイングによって染み、滲み、歪みなどを加え、既存のイメージを解体、再構築していき、それを油彩によって再現します。ドローイングは「生」を感じる瞬間に完結し、油彩の工程は精神的な感覚を覚える要因を獲得する行為だと佐藤は述べています。
これまで、佐藤は、この世界とその解釈のかたちなき複雑で言語化できないエネルギーを、「顔」をモチーフに作品化してきました。今回、世界的なパンデミックにより人々の社会生活は一変し、震災を経験した日本の私達にも対処しきれない感情が横たわり、これまで以上に他者との関係が問われる中で、佐藤は様々な工程を経て描かれた「顔」を他者を理解する手立てとして捉え、本展が他者を理解し寄り添う為の一つのきっかけとして機能することを願っています。
作家ステイトメント
今日における世界規模のパンデミックに際し、「神はなぜ沈黙を守るのか」という問いに思いを巡らせる。
多くの犠牲と苦しみのなかで、全知全能の神がなぜ闇のように口を噤み、人々の苦悩と祈りに手を差し伸べてはくれないのかという、これまで幾度となく繰り返されてきた問いだ。
それは単に神の実存を問う宗教的な命題ということだけに終始しない。信仰の有無を越えて、己の存在と己とは絶対的に異なる他者への切実なまなざし、いつくしみといたわりへの寄り添いである。このきわめて根源的な人間存在への問いと営為に、私は「顔」のありようと同じ源泉をそこに見て取る。
「顔」とはその現れに見られるように、「私」の前に現れる「私」とは絶対的に異なる「他者」の現前である。「私」は「他者」のすべてを把握できないように、「顔」は認識されることからいつもするりと抜け出していく。また、視覚にのみに還元されることもない。「顔」は「顔」ということ自体に意味があるのであって、なにか特定の概念、文脈、固定されたイメージに帰着しない。むしろ、自明とする「顔」なるものの理解をつねに軽々と越え、意味が立ち上がっては不断に打ち消されていく無限の可能性を孕む現れである。
この「顔」の特異性は、決して神秘的な類のものではない。「顔」は、「私」と「他者」とのあいだに築かれる、倫理的関係の結節点として重要な役割を担っている。理解を絶し、共感をも絶する他者、かつて存在したであろう者も含め、絶対に異なる存在である「他者」を「私」はどう受け止め、共生し、どのように共同体を作っていくのかという、どこまでも現実に肉薄した生きたかかわり。総じて倫理なのである。
私の描く「顔」は、この「顔」というものの本質に限りなく即することで生成される。見るものではない「顔」、捉え難い「顔」を、見るものである絵画として描くということ。つまりは「見えないもの」である「顔」の本質を、「見えるもの」にするということである。あらゆる物事や時間、身体を通し、いくつもの偶然を享受しながら、画面に人間とその営為の手触りを生成する。そうして描かれた「顔」もまた、表層として可視化されたものを遥かに越えた場所へと押し上げられていくのではないか。
神の沈黙に耳を傾けることなしにその声を聞くことはできないように、自己の枠組みを超えた理解の困難さと向き合うことなしに、己がいま何をなすべきかを人は真に知ることができない。
しかしながら、沈黙に耳を傾けるための肥沃な土壌はそもそも今日において存在するのだろうか。
すべての業には時があるように、すべての業には場所が必要である。神が沈黙する今、私はせっせと土を耕す。そうして生まれた「顔」が観者と対面するとき、いまを生きるための隣人となることを切に願っている。
画像 | 《あなたが泳ぐなら私も泳ぐ》 2021 油彩、キャンバス 1620×1303mm(F100)
■佐藤未希インタビュー | 美術手帖(WEB)
WEB版「美術手帖」にて、佐藤未希のインタビュー記事が掲載されています。
佐藤が、作品や制作について語っています。
是非ご一読下さいませ。
https://bijutsutecho.com/magazine/interview/oil/24181
■関連企画|佐藤未希 on OIL by 美術手帖
佐藤未希「沈黙の声」開催に合わせ、『美術手帖』によるアートのマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」(WEB)上にて、佐藤未希の作品を公開致しました。
現在の個展の出品作から近年の秀作まで、新作・近作を約20点掲載。
ご購入も可能です。
このコロナ禍にてご来廊が難しい方やご遠方の方も、ネット上ではございますが、佐藤未希の作品をご高覧いただけますと幸いです。
2021年6月16日(水)-7月4日(日)
https://oil.bijutsutecho.com/artist/1584
佐藤未希 SATO Miki >> |
1986 |
山形県に生まれる |
2009 |
東北芸術工科大学美術科洋画コース 卒業 |
2011 |
東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修士課程 修了 |
2014 |
東北芸術工科大学大学院博士課程 修了、博士号 |
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東北文化研究センター研究員(-2017) |
現在 |
富山県在住 |
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個展 |
2019 |
「この顔をみたことがあるか」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2018 |
「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2016 |
「DIVER」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2015 |
「出で入るもの」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2014 |
「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
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N.E.blood21 Vol.51 「佐藤未希」展 (リアス・アーク美術館/宮城) |
2013 |
東北芸術大学大学院 博士学位審査公開レビュー (悠創館/山形) |
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「STRUCTURE/COSMOS」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2011 |
「1 breath, 2 contact」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2010 |
「Mountain Messenger」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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グループ展 |
2020 |
10周年記念展 「Decade vol.2」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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10周年記念展 「Decade vol.1」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2015 |
「5th Anniversary Festival !!」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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新進芸術家育成交流作品展 「FINE ART/UNIVERSITY SELECTION」 (茨城県つくば美術館/茨城) |
2012 |
「-spring fair-」 (ギャラリー椿/東京) |
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「Physical side II」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「Primitive [ in order ](秩序の中の原初)」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2011 |
「Insight "Repetition/反復II"」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「Insight "Repetition/反復"」 (ART OSAKA/ホテルグラヴィア大阪/大阪) >> |
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「佐藤未希+上出長右衛門窯 展」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2010 |
「Yoshimi Arts opening exhibition “0+”@KAM」 (KOBE ART MARCHE - Yoshimi Arts/神戸ポートピアホテル/兵庫) |
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「Yoshimi Arts opening exhibition “0+”」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希・鈴木奈津子展」 (SAN-AI GALLERY/東京) |
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「春季二紀展」 (東京都美術館/東京) |
2009 |
「表層の冒険者たち-Vol.4」 (海岸通ギャラリーCASO/大阪) |
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「Art Point selection Ⅱ」 (GALLERY ART POINT/東京) |
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「Art Smash-投げかけるアート-展」 (ギャラリーQ/東京) |
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「perche展」 (銀座スルガ台画廊/東京) |
2008 |
「シェル美術賞展」 (代官山ヒルサイドフォーラム/東京、
京都市立美術館別館/京都) |
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「二紀展」 (国立新美術館/東京 同09,10,11,12) |
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「佐藤未希・矢口聖奈展」 (文翔館ギャラリー/山形) |
2007 |
「ななのかたち展」 (小野画廊) |
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受賞歴 |
2010 |
第10回春季二紀展 新人選抜大賞 (東京都美術館/東京) |
2008 |
シェル美術賞展 入選 |
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コレクション |
Japigozzi Collection |
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