この度、Yoshimi Artsでは、佐藤未希の個展「おもかげを求めて」を開催致します。
佐藤はこれまで、この世界とその解釈のかたちなき複雑で言語化できないエネルギーを、「顔」をモチーフに作品化してきました。本展においては、同様に「顔」をモチーフとしつつ、「かげ」に焦点をあて、現代で使われる闇の部分の意味だけではなく、光をともない陰影を内包する「かげ」の語源的な意味を紐解きながら制作した新作を発表します。
また、これまでは様々なメディアを流通する既存のイメージにドローイングを幾重と重ね考察を行い、そのドローイングを基に油彩を制作してきましたが、本展ではイメージを用いるのではなく、自身に関わる記録や記憶をもとにしており、佐藤の新たな展開をご覧いただけるでしょう。
弊廊において、開廊した2010年に佐藤は1回目の個展「Mountain Messenger」を行い、今回で個展は2年ぶり8回目となります。
是非、この機会にご高覧下さいませ。
古く⽇本においては、光を「かげ」と⾔い、光のともなう姿としての陰影もまた「かげ」と言った。つまり、「かげ」は語源的にきらきらとした輝きや光そのものを意味するとともに、その光に照らされるものの形貌や、その背後にできる闇の部分を意味する言葉であった。
だが、現代において「かげ」は「影」または「陰」と綴り、光のあたらないところ、光の背後にできる闇の部分(shadow)という側面だけがその意味するところとなった。
私と私の「かげ」はこれまでもこれからもつねに分かち難く共にある。⽣まれたそのときから光あるところには必ず存在し、私がその⽣を全うするそのときにおそらく「かげ」もまた消える。しかし、現代を⽣きる私たちの「かげ」はある意味ではじめからほとんど消えている。光と分化した「かげ」は意識の外へと追いやられ、つねに無意識のうちにあるからだ。
それはただ取るに⾜らない存在だからだろうか。おそらくそうではない。「かげ」はしばしば矛盾をはらみ、不穏で非合理的で得体の知れないものだからである。
しかし、意識と無意識の領域はそもそも画然としたものなのだろうか。今はほとんど忘れ去られた光と分かち難く結びついた「かげ」。それは見えもし見えずもある。私は意識と無意識が混ざりあう場所で、そうしたものの感覚的実体を丁寧に拾い上げ、「手触り」をかたちにしている。
罔兩、景に問いて曰わく、曩には子行き、今は子止まる。曩には子坐し、今は子起つ。何ぞ其れ特操なきやと。景曰わく、吾れは待つ有りて然る者か。吾が待つ所は又た待つ有りて然る者か。吾れは蛇蚹・蜩翼を待つか。悪くんぞ然る所以を識らん。悪くんぞ然らざる所以を識らんと。
金谷治訳註『荘子 第一冊』岩波文庫、1971年
荘子に倣えば、あるがままの様相を是認すべきだろう。しかし、これがもし自らの「かげ」よってかわされた問答ならば、主体としての「私」はどのように応え、どのように振る舞うのか。その応えが、振る舞いが、自身を変化させ、「私」を動かしている目に見えない遠くの「何か」をも変えていく可能性があるのではないだろうか。
佐藤未希
佐藤未希 SATO Miki >> |
1986 |
山形県に生まれる |
2009 |
東北芸術工科大学美術科洋画コース 卒業 |
2011 |
東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修士課程 修了 |
2014 |
東北芸術工科大学大学院博士課程 修了、博士号 |
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東北文化研究センター研究員(-2017) |
現在 |
富山県在住 |
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個展 |
2022 |
「佐藤未希 ビューイング展」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2021 |
「顔の逆説」 (G.ART FIELD/東京) |
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「佐藤未希 2010-2021」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「沈黙の声」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2019 |
「この顔をみたことがあるか」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2018 |
「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2016 |
「DIVER」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2015 |
「出で入るもの」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2014 |
「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
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N.E.blood21 Vol.51 「佐藤未希」展 (リアス・アーク美術館/宮城) |
2013 |
東北芸術大学大学院 博士学位審査公開レビュー (悠創館/山形) |
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「STRUCTURE/COSMOS」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2011 |
「1 breath, 2 contact」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2010 |
「Mountain Messenger」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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グループ展 |
2022 |
「diverse paintings」 (西武渋谷店 美術画廊・オルタナティブスペース/東京) |
2020 |
10周年記念展 「Decade vol.2」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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10周年記念展 「Decade vol.1」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2015 |
「5th Anniversary Festival !!」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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新進芸術家育成交流作品展 「FINE ART/UNIVERSITY SELECTION」 (茨城県つくば美術館/茨城) |
2012 |
「-spring fair-」 (ギャラリー椿/東京) |
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「Physical side II」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「Primitive [ in order ](秩序の中の原初)」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2011 |
「Insight "Repetition/反復II"」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「Insight "Repetition/反復"」 (ART OSAKA/ホテルグラヴィア大阪/大阪) >> |
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「佐藤未希+上出長右衛門窯 展」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2010 |
「Yoshimi Arts opening exhibition “0+”@KAM」 (KOBE ART MARCHE - Yoshimi Arts/神戸ポートピアホテル/兵庫) |
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「Yoshimi Arts opening exhibition “0+”」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希・鈴木奈津子展」 (SAN-AI GALLERY/東京) |
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「春季二紀展」 (東京都美術館/東京) |
2009 |
「表層の冒険者たち-Vol.4」 (海岸通ギャラリーCASO/大阪) |
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「Art Point selection Ⅱ」 (GALLERY ART POINT/東京) |
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「Art Smash-投げかけるアート-展」 (ギャラリーQ/東京) |
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「perche展」 (銀座スルガ台画廊/東京) |
2008 |
「シェル美術賞展」 (代官山ヒルサイドフォーラム/東京、
京都市立美術館別館/京都) |
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「二紀展」 (国立新美術館/東京 同09,10,11,12) |
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「佐藤未希・矢口聖奈展」 (文翔館ギャラリー/山形) |
2007 |
「ななのかたち展」 (小野画廊) |
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受賞歴 |
2010 |
第10回春季二紀展 新人選抜大賞 (東京都美術館/東京) |
2008 |
シェル美術賞展 入選 |
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コレクション |
Japigozzi Collection、高橋龍太郎コレクション |