
佐藤未希「ほんたうの、」
2025年6月21日(土)-7月13日(日)
12:00-19:00 (日 -17:00)
月・火 休
Yoshimi Arts
この度、Yoshimi Artsでは佐藤未希の個展「ほんたうの、」を開催致します。
佐藤の作品の制作過程は、ドローイングの工程を幾重と重ね考察を行い、油彩によるタブロー制作へと至ります。ドローイングによって染み、滲み、歪みなどを加え、イメージを解体、再構築していき、それを油彩によって再現します。ドローイングは「生」を感じる瞬間に完結し、油彩の工程は精神的な感覚を覚える要因を獲得する行為だと佐藤は述べています。
これまで、佐藤は、この世界とその解釈のかたちなき複雑で言語化できないエネルギーを、「顔」をモチーフに作品化してきました。今日の世界はどの地域においても不安定な状況が続き、深刻な問題がいたる場所で噴出しています。佐藤はそのような世界への眼差しを持ち、作品により表現していこうという態度を持っています。
本展では、新作のタブローを展示致します。是非、この機会にご高覧下さいませ。
昨年の夏、ネパールからタイへと向かう深夜便の機窓にて不思議な光景を⽬にした。
カトマンドゥを⽴ち、ほどなくして窓の外に⽬を遣ると、オレンジ⾊に輝く⼀筋の光が複雑に蛇⾏しながらどこまでも続いていた。その輝きは、⼈の暮らしの灯りが霞むほどである。延々と続く光の線をただ漠然と眺めていると、気づけばいつしか広⼤なガンジス・デルタへと出た。
のちに、それがインドとバングラデシュの国境を照らす投光器の光であったことを知る。⼆カ国国境の総延⻑は4000kmを超え、投光照明の設置は実に1000㎞に及ぶ。有刺鉄線をそなえたバリケード壁は、不法移⺠やテロリストの越境侵⼊などを阻⽌するために作られ、両国間を決定的に分断している。
国境線は地図上にのみ引かれているのではない。実際に⽬に⾒えるかたちでこの世界に存在している。それもトレースしたかのような忠実さで。
境界線が分かつものとは⼀体何なのか。
さまざまな⼈間がひしめき合うトリブバン国際空港で、私はインド⼈とバングラデシュ⼈の⾒分けなどつかなかった。そこにいる⼈々はそれぞれの時間を過ごしながら皆同じように搭乗の時を待っていた。
世界にはさまざまな国や地域があり、そこに暮らす⼈々は多彩な歴史と⽂化を織りなす。⾔語や宗教、思想なども多種多様に異なる。だが、それらはズレを含みつつ、互いに重なり合い、混じり合っている。伸縮し、グラデーションをなしており、流動的である。
私がそこで⾒たものは、相違点ではなく、世界の複雑さと未規定性であった。
いま「真実」や「たしかさ」、「正しさ」といったものを希求するとき、そこには不可能性という不可避な逆説を孕んでいる。それは混濁した世界で、我々がつねに何かを取り逃がし続けているからである。
何かを規定した瞬間、我々は必ず何かを切り捨てる。そこから溢れ、こぼれ落ち、割り切れなさが露呈する。規定や分別を⽬的とする国境線が、むしろその不可能性を強く⽰しているように。
⽬に焼き付いて離れないあの鮮烈な光は、こうした逆説に眼差しを向け続けることをやめぬよう私を説くのである。
佐藤未希
画像|《鎖と綱》 2025 油彩、キャンバス 1120×1620mm(P100)
佐藤未希 SATO Miki >> |
1986 |
山形県に生まれる |
2009 |
東北芸術工科大学美術科洋画コース 卒業 |
2011 |
東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修士課程 修了 |
2014 |
東北芸術工科大学大学院博士課程 修了、博士号 |
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東北文化研究センター研究員(-2017) |
現在 |
富山県在住 |
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個展 |
2023 |
「おもかげを求めて」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2022 |
「佐藤未希 ビューイング展」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2021 |
「顔の逆説」 (G.ART FIELD/東京) |
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「佐藤未希 2010-2021」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「沈黙の声」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2019 |
「この顔をみたことがあるか」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2018 |
「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2016 |
「DIVER」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2015 |
「出で入るもの」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2014 |
「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
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N.E.blood21 Vol.51 「佐藤未希」展 (リアス・アーク美術館/宮城) |
2013 |
東北芸術大学大学院 博士学位審査公開レビュー (悠創館/山形) |
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「STRUCTURE/COSMOS」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2011 |
「1 breath, 2 contact」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希展」 (ギャラリー椿/東京) |
2010 |
「Mountain Messenger」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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グループ展 |
2024 |
「カンヴァスの同伴者たち 高橋龍太郎コレクション」 (山形美術館/山形) |
2022 |
「diverse paintings」 (西武渋谷店 美術画廊・オルタナティブスペース/東京) |
2020 |
10周年記念展 「Decade vol.2」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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10周年記念展 「Decade vol.1」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2015 |
「5th Anniversary Festival !!」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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新進芸術家育成交流作品展 「FINE ART/UNIVERSITY SELECTION」 (茨城県つくば美術館/茨城) |
2012 |
「-spring fair-」 (ギャラリー椿/東京) |
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「Physical side II」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「Primitive [ in order ](秩序の中の原初)」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2011 |
「Insight "Repetition/反復II"」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「Insight "Repetition/反復"」 (ART OSAKA/ホテルグラヴィア大阪/大阪) >> |
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「佐藤未希+上出長右衛門窯 展」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
2010 |
「Yoshimi Arts opening exhibition “0+”@KAM」 (KOBE ART MARCHE - Yoshimi Arts/神戸ポートピアホテル/兵庫) |
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「Yoshimi Arts opening exhibition “0+”」 (Yoshimi Arts/大阪) >> |
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「佐藤未希・鈴木奈津子展」 (SAN-AI GALLERY/東京) |
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「春季二紀展」 (東京都美術館/東京)<同13> |
2009 |
「表層の冒険者たち-Vol.4」 (海岸通ギャラリーCASO/大阪) |
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「Art Point selection Ⅱ」 (GALLERY ART POINT/東京) |
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「Art Smash-投げかけるアート-展」 (ギャラリーQ/東京) |
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「perche展」 (銀座スルガ台画廊/東京) |
2008 |
「シェル美術賞展」 (代官山ヒルサイドフォーラム/東京、
京都市立美術館別館/京都) |
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「二紀展」 (国立新美術館/東京) <同09,10,11,12> |
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「佐藤未希・矢口聖奈展」 (文翔館ギャラリー/山形) |
2007 |
「ななのかたち展」 (小野画廊) |
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受賞歴 |
2010 |
第10回春季二紀展 新人選抜大賞 (東京都美術館/東京) |
2008 |
シェル美術賞展 入選 |
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コレクション |
Japigozzi Collection、高橋龍太郎コレクション |
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